
介護の制度は、家族や本人が安心して生活するための支えとなるしくみです。
しかし、複雑でわかりにくいと感じる人も多いでしょう。特に、家族の介護をはじめたばかりの人や、これから準備をはじめる人は、どこから手をつけるべきか迷ってしまいます。
また、介護は、長期にわたるケースも多くあります。介護疲れを防ぐためには、制度についての知識を深めることが大切です。
前編では、介護初心者に向けて、介護制度の基本から利用までの流れを整理しています。この記事を参考にして、あなたと家族の安心につなげてください。
介護制度の基本的なしくみ

まずは、介護の制度全体を理解しましょう。
日本における介護の根幹をなすのは介護保険制度です。介護保険制度の基本を知り、不安を解消してから介護をスタートしましょう。
介護保険制度の目的と特徴
介護保険制度は、高齢化の進展にともない、介護を社会全体で支え合うことを目的として2000年に創設された制度です。要介護者の身の回りの世話をするだけでなく、自立支援と利用者本位のサービス提供を基本理念としています。
介護保険制度は、それまでの行政がサービスを決める「措置制度」から、利用者がサービスを選択する「契約制度」へと大きく転換しました。
契約制度へ転換し、利用者の自己決定権が尊重され、多様なニーズに合わせたサービス選択が可能となりました。
介護保険制度の財源は、公費(税金)と保険料でまかなわれています。40歳以上の国民全員が被保険者となり、保険料を納めることで、介護が必要になった際にサービスを利用できるしくみです。
利用者は、原則として費用の1割から3割を自己負担するだけで、さまざまな介護サービスが受けられます。介護施設への入所はもちろん、住み慣れた自宅で自立した日常生活を送るための支援も受けられます。
対象となる人とサービスの範囲
介護保険のサービスを利用できる被保険者は、以下のとおりです。
1.第1号被保険者(65歳以上の人)
要介護状態または要支援状態と認定された場合に、その原因を問わずサービスを利用可能。認知症や老衰など、さまざまな理由で介護が必要になった人が該当す る。
2.第2号被保険者(40歳から64歳までの人)
特定の16種類の特定疾病により、要介護状態または要支援状態と認定された場合に限り、サービスを利用可能。若年性認知症や末期がんなど、早期に介護が必要 となる可能性のある疾病が指定されている。
なお、提供されるサービスの範囲は広く、以下のように分けられます。
・居宅サービス:自宅で受ける訪問介護や通所介護(デイサービス)
・施設サービス:特別養護老人ホームへの入所
・地域密着型サービス:小規模多機能型居宅介護
いずれのサービスも、要介護度に応じて利用できる上限額が定められています。上限額を超えた分は全額自己負担で利用可能です。
介護認定のしくみ
介護保険のサービスを利用するためには、住んでいる市区町村に申請し、要介護認定を受けなければいけません。
要介護認定とは、どの程度の介護が必要かを公的に判定するしくみであり、サービスの利用開始に必要です。要介護認定を受けると、利用できるサービスの種類や保険から給付される上限額(支給限度額)が決定します。
介護認定を受ける手順は以下の通りです。
1.申請:
市区町村の窓口に申請書と介護保険被保険者証を提出する。地域包括支援センターや居宅介護支援事業者の代行申請もできる。
2.訪問調査
認定調査員が自宅などを訪問し、申請者の心身の状態や生活状況、家族の介護状況などをヒアリングする。身体機能や生活機能、認知機能、社会生活への適応などを調査する。
3.主治医の意見書
市区町村が、申請書に記載された主治医に病状や医学的な見地からの意見書の作成を依頼する。
4.審査・判定
訪問調査の結果と主治医の意見書に基づき、介護認定審査会が審査をする。コンピューターによる一次判定と、専門家による二次判定を経て、「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかに当てはめる。
なお、要介護度が高いほど、より多くのサービスが利用できます。
また、申請から認定結果が出るまでには、通常1ヶ月程度かかります。認定結果に不服がある場合は、都道府県に設置された介護保険審査会に不服申し立ても可能です。
まとめ

この記事では、介護の制度の基本である介護保険制度のしくみを解説しました。
介護は、長期間にわたる可能性もあるため、ひとりで抱え込んではいけません。公的な支援である介護保険制度は、あなたと家族が安心して生活を送るためのセーフティーネットです。
まずは、要介護認定の申請からはじめてください。
後編では、具体的なサービス内容、そして制度を上手に活用するための実践的なポイントを解説します。



