
「床ずれが発生する原因を知りたい」「床ずれの予防方法を知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
長期にわたり療養生活を送っている方や、寝たきりの方にとって、床ずれは避けて通ることのできない大きな課題です。
床ずれは、単に同じ姿勢で寝ているだけで発生するわけではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生するため、総合的なケアが求められます。
今回は、床ずれが発生する3つの主な原因とリスクを高める要因、さらに予防策について解説します。床ずれの原因を正しく理解し、今日から実践できる予防策を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
床ずれが発生する3つの原因

床ずれが発生する3つの原因は、以下のとおりです。
・圧迫
・摩擦
・ずれ
順番に解説します。
圧迫
床ずれが生じる原因の一つは、圧迫です。身体の同じ部位が長時間圧迫されると、皮膚組織の毛細血管が潰され、血液の流れが著しく悪くなります。
血液の流れが悪くなると、細胞に必要な酸素や栄養が届かなくなり、組織が壊死(えし)して床ずれが発生します。
特に仙骨や踵など、骨が突出している部位で起こりやすく、2時間以上同じ場所に圧がかかり続けるとリスクが高いです。
自力で寝返りが打てない方は、圧迫状態が長く続くため、さらにリスクが高まります。圧迫を予防するには、正しい体位変換を行って定期的に圧迫を解除し、体圧分散ができる寝具を活用することも有効です。
摩擦
皮膚が寝具や衣服とこすれる「摩擦」も、床ずれの大きな原因です。摩擦力が加わると、皮膚の最も外側にある角質層が削り取られ、皮膚の抵抗力が低下するからです。
抵抗力が低下した皮膚は、「圧迫」や「ずれ」など他の要因によるダメージをより深く、そして速く受けやすくなります。摩擦は、主に以下のような状況で発生します。
| 摩擦が発生する状況 | 内容 |
| 体位変換時 | 身体を無理に引っ張ったり、引きずったりしたとき |
| シーツのたるみ・しわ | シーツのしわが皮膚にこすれたとき |
| 乾燥・湿潤 | 皮膚が過度に乾燥しているときや、失禁や発汗によって皮膚が湿っている場合(皮膚がふやけている状態では、摩擦の影響を5倍も受けやすくなると言われている) |
摩擦による床ずれを防ぐには、体位変換の際に皮膚をこすらないよう十分に注意し、シーツや寝衣のしわをしっかり伸ばすことが大切です。また、適切なスキンケアで皮膚のバリア機能を保つことも欠かせません。
ずれ
ずれは、皮膚の深い内部の血管を損傷させ、床ずれを引き起こす原因の一つです。身体の表面は動かず、内部の骨や皮下組織だけが重力で斜め下に引っ張られることで、血管が引き伸ばされて血流が遮断されます。
ずれは、表面的な摩擦よりも深い組織破壊を引き起こすため大変危険です。具体的にずれが発生しやすいのは、ベッドの背上げ(ギャッジアップ)時にお尻がマットレス上でずり落ちそうになるときです。
また、車椅子からベッドに移る際など、身体を斜めに引きずるような動作でもずれが生じます。表面に赤みがなくても、内部では深刻なダメージが生じている可能性があります。
「ずれ」を防ぐには、身体を斜めに引きずることを避け、骨と皮膚を一緒に持ち上げるように移動させることが大切です。
床ずれのリスクを高める要因

床ずれは、「活動性の低下」「栄養状態の悪化」「皮膚の湿潤」など複数の要因が複合的に絡み合い、発生リスクを高めます。
動けないことで圧迫が続き、栄養不足で皮膚のクッション性や修復力が低下し、湿潤で皮膚のバリア機能が破壊されるため、組織がダメージを受けやすく治りにくい状態になります。
特に以下に当てはまる方は、圧迫によるダメージの回復が極端に遅れるため、注意が必要です。
・寝たきりの方や麻痺のある方(活動性低下)
・痩せている方(低栄養)
・そしておむつを使用している方(湿潤)
床ずれを予防するには、圧迫を取り除くだけでなく、リスク要因をすべて確認し、栄養管理やスキンケアなど総合的なアプローチが重要です。
床ずれの予防策

床ずれの予防策は以下の2つが挙げられます。
・体圧分散を徹底する
・スキンケアと栄養管理で肌の抵抗力を強める
それぞれ解説します。
体圧分散を徹底する
床ずれ予防の基本は、主な原因である「圧迫」を解消するために、体圧分散を徹底することです。
身体と寝具の接触面積を広げると、一点に集中する圧力を分散し、血管の圧迫と血流途絶を防ぐことができるためです。具体的には、以下の2つの方法で体圧を分散します。
| 体圧を分散する方法 | 内容 |
| 体位変換 | 自力で寝返りができない方は、介護者が2時間ごとを目安に体位を変えることで、圧迫されていた部位を解放する。(使用するマットレスの種類によっては4時間ごとで良い場合もある) この際、身体を30度側臥位(お尻の広い面で体重を支える姿勢)にすることで、圧迫が分散しやすくなる。 |
| 体圧分散寝具の活用 | エアーマットレスや高機能ウレタンマットレスなど、体格やリスクレベルに合った福祉用具を導入し、常時体圧を分散させる環境を整える。 |
体圧分散の徹底は、床ずれの直接的な原因を取り除ける効果的な予防策です。体位変換と体圧分散寝具の両方を活用し、圧迫のない状態を維持しましょう。
スキンケアと栄養管理で肌の抵抗力を強める
皮膚を清潔で潤った状態に保つスキンケアと、十分な栄養管理は、床ずれに対する肌の抵抗力を強めるために欠かせません。
栄養が不足すると皮膚は弱く薄くなり、クッション性が失われます。また、湿潤な状態が続くと皮膚がふやけてバリア機能が壊れるため、傷つきやすく、治りにくい状態になるからです。具体的な対策は以下の通りです。
・スキンケア: 汚れた皮膚はすぐに優しく洗浄し、タオルで強くこすらず押さえるように拭き取る。そのあと、保湿剤で乾燥を防ぎ、失禁のある部位には撥水(はっすい)クリームなどで排泄物から皮膚を保護する。
・栄養管理: 皮膚の修復に必要なタンパク質や、細胞の再生に関わるビタミンC・亜鉛などを意識的に摂取し、低栄養状態を改善する。
肌の抵抗力を高めておくと、圧迫を受けても傷の発生を防いだり、早期の回復が期待できたりします。毎日のスキンケアと栄養摂取を欠かさないようにしましょう。
まとめ

本記事では、床ずれが発生する3つの原因と、具体的な予防策を解説しました。床ずれは、「圧迫」「摩擦」「ずれ」3つの直接的な原因に加えて、複数のリスク要因が複合的に絡み合い発生します。
予防するためには、原因とリスクを同時に管理する総合的なケアが欠かせません。本記事を参考に、原因と対策をしっかりと理解し、安全で快適な療養環境を整えましょう。



