
介護保険で「要支援」と「要介護」に分かれると、同じ“訪問介護(ヘルパー)”でも、使えるサービスの枠組みや考え方が大きく変わります。
要支援は「これから要介護にならないように予防すること」
要介護は「すでに介護が必要な状態を支えること」
が制度上の目的として位置づけられており、この違いがそのままサービス内容やケアプランの組み立て方に反映されます。
そのため、
「週に何回来てもらえるか」
「どこまで家事をお願いできるか」
「身体介護はどの程度まで頼めるのか」
といった具体的な使い勝手も、要支援か要介護かで変わってきます。
この記事では、介護保険制度の基本から整理しながら、
要支援と要介護それぞれの訪問介護の位置づけと、
現場での上手な使い方のポイントをわかりやすく解説します。
要支援・要介護の基本的な違い

要介護認定は「どれくらい介護の手間がかかるか」を時間で評価し、
要支援1・2、要介護1〜5の7区分に分かれます。
要介護は「日常生活の基本動作に常時介護が必要な状態」、
要支援は「将来の要介護を予防するために支援が必要な状態」と定義されています。
・ 要支援1・2
・食事や排せつはほぼ自立しているが、立ち上がりなど一部に手助けが必要
・今の状態を維持し、悪化を防ぐことが目的
・ 要介護1〜5
・要介護1:一部の動作に介助が必要な「軽い介護状態」
・要介護5:日常生活のほとんどに全面的な介助が必要な「最重度の状態」
この「目的」と「必要な介護量のイメージ」をおさえておくと、訪問介護の使い方が整理しやすくなります。
要支援で使えるのは「訪問型サービス」
「要支援」は、従来の“訪問介護”ではなく、市町村が行う介護予防・生活支援事業の中の「訪問型サービス」を利用します。
同じく自宅に来てくれるサービスですが、介護保険上の位置づけや目的が異なります。
・ 対象
・要支援1・2の認定を受けた方、または基本チェックリストに該当して介護予防事業の対象となった方。
・ サービスの目的
・「できること」を引き出し、できるだけ長く自立した生活を続けてもらうこと。
・ 内容のイメージ
・掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助が中心。
・本人が参加できるように一緒に行い、機能低下を防ぐ関わり方が重視される。
ケアプランも、単に「困りごとを代わりにやる」より、「この先5年、10年先も暮らせる体と環境を整える」という視点で組み立てていくのがポイントです。
要介護で使うのが「訪問介護」
一方、要介護1〜5になると、居宅サービスのひとつとして「訪問介護(ホームヘルプ)」が利用できます。
ここでは、身体介護と生活援助の両方を組み合わせて、日常生活全般を直接支える役割が大きくなります。
・ 対象
・要介護1〜5の認定を受けた方。
・ サービス内容
・身体介護:入浴・排せつ・食事介助、移乗・移動介助、更衣などの直接的な介助。
・生活援助:掃除・洗濯・調理・買い物など、日常生活に必要な家事援助。
・ 利用回数の目安
・要介護3で訪問介護週3回+通所サービス週3回など、他サービスと組み合わせて使う例が示されています。
・要介護4〜5では、訪問介護が週6回程度利用されるケースもあります。
要介護では、「安全に暮らすために必要な介護をどう組み合わせるか」が中心テーマになります。
訪問看護や通所リハビリテーション、福祉用具との連携も重要になってきます。
要支援と要介護で変わる「訪問の使い方」

同じ“ヘルパーが家に来る”サービスでも、要支援と要介護では、使い方の考え方がかなり違います。
・ 目的の違い
・要支援:悪化予防・自立支援が目的。
あくまで「自分でできることを増やす/維持する」ためのサポート。
・要介護:今必要な介護を安全に提供し、生活を維持することが目的。
・ 家事援助の考え方
・要支援:一緒に調理・掃除を行うなど、リハビリ的な関わりが求められる。
・要介護:本人の状態によっては、ヘルパーが代行する割合が増える。
・ 利用回数・組み立て
・要支援1では、訪問型サービスは週1〜2回程度などの制限が設けられることがあります。
・要介護は介護度に応じて支給限度額が設定され、その範囲で訪問介護・通所・福祉用具などを組み合わせます。
ケアマネジャーとしては、「今の困りごと」と同時に、「半年〜1年後にどうなっていたいか」を本人・家族と共有し、要支援か要介護かでゴール設定とプランニングを変える視点が欠かせません。
介護保険制度から見る賢い使い分け
介護保険では、区分ごとに使えるサービスや枠組みが細かく決められており、「どの区分で何を使うか」で生活の選択肢が大きく変わります。
そのため、認定結果を「重い/軽い」と感情的に受け止めるだけでなく、「この区分ならこういう訪問サービスが使える」と制度的に理解しておくことが重要です。
・ 要支援期に大切にしたい視点
・早めに基本チェックリストや相談窓口につながることで、介護予防事業や訪問型サービスを活用しやすくなります。
・軽い不調の段階で支援につながることで、要介護化のスピードを緩やかにできる可能性があります。
・ 要介護期に大切にしたい視点
・訪問介護だけに頼らず、通所介護・訪問看護・短期入所・福祉用具などを組み合わせると、家族の負担軽減にもつながります。
・夜間対応型訪問介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護など、より手厚い在宅支援サービスは要介護で利用可能です。
要支援・要介護いずれの段階でも、最初の相談窓口は地域包括支援センターや担当ケアマネジャーです。
「どこまで自分たちで頑張るか」ではなく、「制度をどううまく使って、無理なく暮らしを続けるか」という視点で、一緒にプランを考えていくことが、これからの介護には欠かせません。
まとめ

要支援と要介護では、訪問介護の制度上の位置づけや役割が大きく異なります。
要支援は「これから要介護にならないための予防」が目的で、できる力を活かす関わりが重視されます。
一方、要介護は「今の生活を安全に続けるための介護」が中心となり、身体介護や生活援助を組み合わせた支援が行われます。
認定区分を正しく理解し、本人や家族の将来像を共有しながら制度を使い分けることが、無理のない在宅生活につながります。



