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冬のせい?介護職が知っておきたい認知症初期サインと対応策【前編】

「認知症初期に見逃してはいけないサインは?」

「認知症のある方が冬に気をつけるべきことは何だろう?」

訪問介護に携わるあなたは、このような疑問をお持ちではありませんか。

 

認知症は早い段階で気づけるかどうかで、その後の暮らしの質や支え方が大きく変わります。

 

この記事では、介護職として押さえておきたい認知症の初期サインと冬ならではの注意点、訪問介護だからこそ気づけるポイントを整理します。

認知症ケアの知識を見直して、明日からの訪問に自信を持てるようになりましょう。

 

介護職が押さえたい認知症の初期サイン 

認知症の初期症状は「物忘れ」だけでなく、判断力や意欲の低下など、生活全体の変化としてあらわれます。

多くの人が「認知症=記憶障害」と考えがちですが、実際には記憶・判断・理解などの認知機能全体が徐々に低下していきます。特に初期段階では、本人も家族も「年のせい」「疲れているだけ」と考えやすく、見過ごされがちです。

代表的な初期症状として

 ・ 同じ話を何度も繰り返す

 ・ 料理や家事の段取りに時間がかかる

 ・ 以前はできていた家事を避けるようになる

といった変化が見られます。

 

老化によるもの忘れは「朝食のメニューを忘れる」など体験の一部を忘れるのが特徴です。一方で認知症は「朝食を食べたこと自体を忘れる」など体験そのものを忘れ、日常生活に支障をきたす点が異なります。

また、軽度認知障害(MCI)の段階で発見し、適切なケアや生活習慣の改善を始めれば、認知機能の低下を緩やかにできる可能性があります。

訪問先では「明確な異常がないから問題ない」と判断しがちです。日時や場所の認識のわずかな違和感や、いつもと違う判断の迷いこそが、介護職にしか気づけない初期サインなのです。

引用元:認知症ケア法ー認知症の理解(P14)

参考:【厚生労働省】認知症ケア法-認知症の理解

 

認知症の初期症状が冬場に進行しやすい理由 

冬は、身体的・心理的な要因が重なり、認知症の初期症状が表に出にくい季節です。

 寒さによる血流低下は、脳の働きにも影響を及ぼします。また、乾燥による脱水や気温差からくる血圧変動は、せん妄を引き起こす原因にもなります。

季節性うつによる意欲低下と認知症初期症状は見分けがつきにくく、介護職の観察力が重要になります。

 

 冬になると「家にこもりがちになり会話が減る」「昼夜逆転して生活リズムが乱れる」といったケースが増えます。

外出の機会が減ったり、活動量が低下したりすると、認知機能を刺激する場面を逃しがちです。これらが重なると、もともと軽度だった症状が目立ちやすくなる場合があります。

 冬だから元気がないだけと思いがちです。しかし、その判断が遅れにつながるかもしれません。季節的な要因も考慮しながら、利用者のささいな変化を的確に観察することが大切です。

 

訪問介護で気づきやすい認知症の初期サイン 

訪問介護では、利用者の自宅での様子から、認知症の初期サインにいち早く気づくことが可能です。

自宅という環境では、利用者の生活習慣や判断力、段取りを考える力がそのまま行動にあらわれます。

 

特に冬場は、環境調整が必要な場面が増え、今までできていたことが急に難しくなるケースも少なくありません。季節に合わない服装を選ぶ、室温管理ができなくなる、食事の準備を面倒がるなども見逃せません。

そのほかに

 ・ 会話中に返答が遅くなる

 ・ 表情が乏しくなる

 ・ 質問の意図を取り違える

といった変化は重要なサインです。

 

注意したいのは、冬になって急にできなくなった日常の動作や作業です。

【ケース①】

・夏場は自分で着替えができていたのに、寒さに合わせた服の重ね着の仕方がわからない

【ケース②】

・暖房器具の操作がわからず、冷えた部屋の中で過ごしている

【ケース③】

・冬になってから入浴や食事の準備を避けるようになる。

 

ケース③では寒さだけでなく、作業工程自体が認知機能の負担になっているせいかもしれません。

忙しい訪問の中で、そこまで細かく見る余裕がないと感じることもあるでしょう。

しかし、以前の訪問と何が違うかを意識することも、認知症の初期サインに気づくきっかけです。その小さな気づきが、利用者の安全と安心につながります。

 

施設やデイサービスと訪問介護で見え方が違う理由

訪問介護では、デイサービスや施設以上に認知症の初期サインが見えやすくなります。

デイサービスは、集団生活の中で利用者自身もできている自分を保とうとする場です。一方、訪問介護は一対一の関わりとなり、自宅という慣れた環境の中で、普段の生活そのものがあらわれます。

 

実際に、デイサービスでは問題なく過ごしている利用者が、自宅では服薬管理ができていなかったり、家事や身支度の段取りがわからなくなったりするケースは珍しくありません。

こうしたADLやIADLの低下は、在宅環境だからこそ気づきやすい重要なポイントです。特に冬場は、寒さや生活リズムの変化によって、その差がはっきり見える場合もあります。

自分一人で判断していいのだろうか、と不安になる場面もあるでしょう。しかし、訪問介護職だからこそ見える情報があります。その気づきは、家族やケアマネジャーとの共有によって、チームケアに価値のある判断材料となるのです。

まとめ:冬の認知症初期サインに気づいて早めの対応につなげよう

認知症の初期症状は、冬になると気づきにくく、進行しやすい特徴があります。

訪問介護は、会話や生活環境など、日常の小さな変化を直接感じられる立場にいます。

完璧な判断を目指す必要はありません。まずは、前回の訪問との違いを意識することから始めましょう。その視点が、利用者を守る第一歩です。

後編では、認知症の方を冬のリスクから守る視点や対応方法を解説します。