訪問介護事業所セレクトエール

介護の仕事内容・現場紹介

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訪問介護だからできる終末期ケア  ― “最期まで自宅で生きる”ことを支える支援とは ― 

 

「できることなら、住み慣れた家で最期を迎えたい」 

そう願う高齢者は年々増えています。 

 

 病院での高度な延命治療よりも、家族の気配を感じる自宅でこれまでと同じような日常の延長線上で過ごしたいと望む人が多くなっています。  

訪問介護職がかかわる時間は、一見すると短時間の身体介護や生活援助に見えます。 

けれどその限られた時間は、利用者本人の生活、その人の人生の歩み、そして家族の思いに深く触れる「特別な時間」です。 

 

終末期では、技術や手順だけでなく、 

「この人はどう生きてきて、どう生き切りたいのか」 

という、その人の価値観や人生観を尊重する姿勢が求められます。  

なぜ自宅での看取りが増えているのか 

近年、自宅での看取りを選ぶ人が増えている背景には、いくつかの社会的な変化があります。  

 ・ 延命よりも、苦痛を減らし「穏やかな最期」を望む価値観が広がってきたこと。 

 ・ 訪問診療・訪問看護・訪問介護など在宅医療・介護の体制整備が進み、「家でも看取りが可能」になってきたこと。  

 

また、地域包括ケアシステムの推進により、「病院か施設か」だけでなく「在宅でどう支えるか」を地域ぐるみで考える仕組みが整ってきました。  

その結果、「どこで亡くなるか」よりも「残された時間をどのように過ごすか」に焦点が当てられ、自宅での看取りが現実的な選択肢になっています。  

訪問介護だからできる終末期の支援 

終末期における訪問介護の役割は、まさに「生活そのもの」を支えることです。  

食事・排泄・清潔・休息・環境調整といった支援は、どれも「まだ私は生きている」「生活している」という感覚を守るための大切なケアです。  

 

食事では、「食べさせること」だけが目的ではありません。 

量が減ってきたときは、「どれなら今、少し口に入れてみたいか」「もう無理をして食べなくても大丈夫ですよ」といった声かけで、本人のペースや意思を尊重しながら見守ることが大切です。  

 

清拭や口腔ケアは、単に清潔を保つだけでなく、「気持ちよさ」「温かさ」「安心感」を届けるコミュニケーションの時間になります。 

触れ方・声のトーン・表情など、一つ一つが「あなたは大切な存在です」というメッセージになります。  

 

さらに、ベッドの位置を変えて窓から外の景色や季節の風を感じてもらうこと、好きだった香りのハンドクリームで手をマッサージすること、家族と同じ部屋で過ごせるよう家具を工夫することなども、すべて終末期ケアの一部です。  

訪問介護は「保険サービスの枠」だけでなく、その人が最後まで「生活者」として暮らせるよう並走する存在だといえます。  

終末期ケアで生じやすい迷いと葛藤 

終末期の訪問介護では、ヘルパー自身や家族が多くの迷いや葛藤に直面します。  

 ・ 食べられなくなってきたとき、「無理にでも食べさせるべきか」「このまま見守ってよいのか」という不安。 

 ・ 声かけをどこまで続けるか、どの程度の刺激が本人にとって心地よいのかという迷い。 

また、本人が「もう病院には行きたくない」「これ以上の治療は望まない」と考えていても、家族は「少しでも長く生きてほしい」と延命を望むなど、思いが食い違うこともあります。 

 医療職・看護職・介護職の間でも、「どこまで医療的介入を行うか」「在宅で続けるか入院に切り替えるか」といった判断軸が異なる場合があります。  

 

このような場面で重要なのは、一つの“正解”を探すことではありません。 

本人の体調や表情、家族の様子をよく観察しながら、「この人と家族にとって自然で納得できる選択は何か」を一緒に考え、その選択をチームで支えることです。  

 

そのために、訪問介護だけで抱え込まず、ケアマネジャー・訪問看護・主治医との連携や、情報共有・カンファレンス・日々の対話が不可欠になります。  

 

家族支援も大切なケアの一部 

終末期になると、家族は「苦しんでいないだろうか」「もっと何かできたのではないか」「この選択でよかったのか」と、強い不安や自責感を抱きやすくなります。 

 訪問介護職は、身体介護や生活援助だけでなく、こうした家族の揺れる気持ちを受けとめる役割も担います。  

 

「このくらい食べたり飲めていれば、今のところ大きな苦しみは出ていませんよ」 

「いまの関わり方は決して間違っていません。一緒に見守っていきましょう」 

 

といった言葉や説明は、家族が「そばにいること」を安心して選べるように背中を押します。 

 家族が安心して傍らにいられることは、利用者本人にとっても大きな支えであり、終末期のQOLを高める大切な要素です。  

まとめ:終末期ケアは“特別なもの”ではない 

終末期ケアは、一部の専門職だけが行う特殊なケアではありません。 

日常の介護や生活支援の延長線上にあり、「その人の生活を最後まで支えるケアを、より丁寧に行うこと」だと捉えられます。  

 

その人らしい生活リズムや好みを最期まで尊重すること。 

不必要な苦痛や不安を減らし、「ここにいてよかった」と感じられる時間を一緒に積み重ねること。 

 

訪問介護は、本人・家族・地域・医療・福祉をつなぐ橋渡し役となり、「生ききる時間」を支える重要な役割を担っています。 

 本人が選んだ生き方と終わり方を尊重し、最期の瞬間までそばにいて支えることこそ、訪問介護だからこそできる、もっとも尊く価値ある支援だといえます。